これまで多くの企業にとって、電力は「購入して使うだけのもの」でした。
電気料金は固定費として当たり前に払い、多少の増減は経費の範囲と捉える。そんな前提で長年運用されてきた現場も少なくないでしょう。
しかし今、“電気を自分でつくる”という考え方が、経営判断の対象として広がりを見せています。
背景には、電力をめぐる環境の変化と、それに対応するための手段として再生可能エネルギーの価値が高まっていることがあります。
■ 電気代の“不安定化”が経営リスクになりつつある
近年、電気料金は単に「高くなる」だけでなく、「読みにくくなる」傾向が強まっています。
原因は、燃料価格の国際的な変動や円安の影響、さらに電力会社が価格転嫁を行う「燃料費調整額」や「再エネ賦課金」の増加など。特にここ数年は、使用量を抑えても請求額が減らない、あるいは増えるという状況が散見されます。
調整費や契約電力といった項目が、企業にとっては“見えづらく、管理しづらい”コスト要因となっており、エネルギーの固定費が不確実性を持ち始めているのです。
■ 停電時に機能が止まる──BCPの穴になっていないか?
電力供給の不安定さは、災害リスクとも結びつきます。
大雪・地震・台風など、停電のきっかけは多岐にわたり、しかも地域を選びません。1時間の停電でも、ラインが停止し、予約業務や温度管理などに重大な支障をきたす事業も多いはずです。
一部の施設ではディーゼル発電機などを備えていますが、「燃料は確保されているか」「実際に起動するか」「数時間を超えて対応できるのか」といった疑問が残るケースもあります。
こうした中、太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、非常時に建物の一部でも自立的に電力供給が可能な体制は、BCP(事業継続計画)として非常に有効です。電力が止まっても「最低限動ける」という備えは、復旧のスピードにも直結します。
■ 環境対応が「評価」から「前提条件」へと変わってきた
環境対応の必要性は年々高まっており、今や「取引の条件」に組み込まれるケースも珍しくありません。
特に製造業やサプライヤー企業においては、Scope1・2排出量の報告、再エネ比率の提示、GHG排出削減計画の策定などが、主要顧客から要請される時代です。
脱炭素への取り組みが進んでいないことで、選ばれにくくなってしまう──そのような競争環境の変化は、規模の大小にかかわらずあらゆる業種に広がっています。 そのなかで、自社の電力を再エネで供給することは、最も分かりやすく、定量化しやすい環境施策のひとつです。経営の透明性や対外的な信頼性を高める意味でも、エネルギーの選び方は重要な指標になりつつあります。
■ 太陽光+蓄電池で実現する「自給と安心」のエネルギー運用
こうした課題に応える手段として注目されているのが、「自家消費型の太陽光発電」と「定置型蓄電池」の導入です。かつては太陽光といえば売電が主な目的でしたが、現在では“自分たちの施設で使う”ことが主眼になっています。これにより、調達電力を削減し、電気料金の単価を“固定化”するという効果が期待できます。さらに、蓄電池を組み合わせれば、
昼間の発電電力を夜間に活用する「時間のシフト」
使用電力のピークを抑える「デマンド抑制」
停電時に稼働を継続できる「バックアップ電源」
といった複数のメリットが得られます。 エネルギーの使い方を“受け身”から“主体的に管理”するフェーズへと進めることができるのです。
■ 小規模でも始められる。選択肢と導入の柔軟性
「電気を自分でつくる」というと、大規模な投資や広い屋根が必要だと考える方も少なくありません。
しかし実際には、事業規模や業種に応じて導入設計は柔軟に対応可能です。設置容量はW単位から選べますし、屋根の形状や使用電力の時間帯に合わせた設計もできます。さらに、自己資金を使わない導入方法(PPAやリース)も整備されており、「初期費用ゼロで始める」という選択肢も現実的です。企業ごとの制約に応じて無理なく導入できる柔軟性も、近年の特徴のひとつと言えるでしょう。
■まとめ: エネルギーの“自立性”が、これからの経営を支えていく
電気は目に見えないインフラでありながら、止まった時の影響は非常に大きなものです。
そして今、その電気が「高く」「不安定で」「求められる方向が変わってきた」からこそ、
企業にとって“どこから電気を得るのか”は、戦略的に考えるべきテーマとなっています。 100%の自給自足を目指す必要はありません。
一部でも自分たちで発電し、備えとして電力を保持することが、コストにもリスク管理にもつながる。
そんな新しいエネルギーとの付き合い方が、これからの経営には求められています。