2026年度から、太陽光導入目標の策定が義務に
経済産業省は、エネルギー消費量の多い工場や店舗などを対象に、屋根置きの太陽光パネル導入目標の策定を2026年度から義務化する方針を打ち出しました。
対象となるのは、年間1500キロリットル(原油換算)以上のエネルギーを使用する約1万2000の事業者で、小売店、倉庫、工場、さらには自治体の庁舎なども含まれます。
これにより、従来メガソーラーが担っていた太陽光導入の役割を、建物の屋根へと移し、エネルギー政策の新たな柱として位置づけていく狙いがあります。
薄型・軽量の「ペロブスカイト太陽電池」に注目
特に、工場や倉庫の屋根などには、軽くて柔軟性のある「ペロブスカイト太陽電池」の活用が期待されています。
この新しい太陽電池は、従来のシリコン型と比べて設置の自由度が高く、建物への負担も少ないのが特長です。
日本では積水化学工業などが技術面で優位に立っており、主要な原材料を国内で調達可能なため、エネルギー安全保障の観点からも有望な技術とされています。
2027年度からは面積・実績の報告義務も
新制度では、義務化は2段階で進められます。
まず、2026年度からは各企業が設置目標を策定し、少なくとも5年に一度の更新を行うことが義務化されます。
次に2027年度からは、各施設ごとに設置可能面積や導入実績などの報告も毎年必要になります。出力予定や進捗状況なども把握され、もし虚偽報告があった場合には最大50万円の罰金が科されることになります。
なぜ今、屋根上太陽光なのか?
背景には、日本の太陽光発電における「土地不足」という現実的な課題があります。
メガソーラーのような大規模設備はすでに適地が少なくなってきており、今後は建物の屋根を最大限活用していく必要があります。
日本エネルギー経済研究所の試算によると、国内の工場や倉庫、商業施設などの屋根に設置可能な太陽光発電量は、原子力発電所2~6基分に相当する16~48テラワット時とされています。これは日本の総発電量の2~5%に相当する規模です。
民間部門への“てこ入れ”で再エネ比率を加速
これまで太陽光パネルの導入は、住宅や公共施設で先行していました。一方で、企業による導入は遅れを取っており、今回の制度改正はその流れを大きく変えることが期待されています。
政府は2024年に改定されたエネルギー基本計画において、2040年までに電源に占める太陽光発電の割合を23~29%まで高めるという目標を掲げています。これは現在の9.8%から大幅な増加を目指すものであり、企業部門の取り組み強化は避けて通れません。
まとめ:太陽光は「義務」から「チャンス」へ
義務化というと重たい印象がありますが、太陽光発電の導入はコスト削減、BCP対策、そして企業イメージの向上にもつながるチャンスです。
加えて、軽量なペロブスカイト太陽電池の登場や補助金制度の充実など、導入ハードルは確実に下がっています。
今後、企業にとって太陽光は「やるべきもの」ではなく、「やった方が得をする」存在として再評価されていくでしょう。
